2017年、セ・リーグのCS(クライマックスシリーズ)が雨の影響で大荒れ状態になったのを覚えていますか?
第1ステージでは「伝説の泥仕合」と表現された阪神 vs DeNAの試合が行われ、降雨コールド(雨天コールドとも、以下降雨コールドで統一)もやむなしという中、結局9回まで試合続行。
ファールになるはずの打球がフェアゾーンで止まってしまったり、普段では考えられないプレーの連続で、試合続行の判断も含め賛否両論の一戦となりました。
第2ステージに入ると、今度は広島 vs DeNAの初戦が5回降雨コールドで広島の勝利(5回裏の攻撃で広島が3点をあげ、そのまま36分間の中断を経て試合終了)。
DeNAはビジターの雨の中、勝ったり負けたり大忙しです...。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回はそんな降雨コールドについてのルール解説と、プロ野球・メジャーリーグと高校野球とで違っている点について、備忘録も兼ねてまとめてみました。
プロ野球の雨天/降雨コールドは5回が基準
まずはプロ野球の降雨コールドについて解説します。
野球規則によると、コールドゲームは次のように定義されています。
(c)球審によって打ち切りを命じられた試合(コールドゲーム)が次に該当する場合、正式試合となる。
(1)5回表裏完了後にコールドゲーム
5回の表裏を完了した後に打ち切りを命じられた試合。(両チームの得点の数には関係がない)(2)5回表完了後、後攻が勝っている時にコールドゲーム
5回表を終わった際または5回裏の途中で打ち切りを命じられた試合で、ホームチームの得点がビジティングチームの得点より多いとき。(3)5回裏攻撃中のコールドゲーム
5回裏の攻撃中にホームチームが得点して、ビジティングチームの得点と等しくなっているときに打ち切りを命じられた試合。野球規則 7.01 正式試合
上で触れた広島 vs DeNAの試合は、5回終了後に中断し、そのまま試合終了となりました。
これは野球規則 7.01(c)の(1)が適用された形になります。広島が3点を先制していたので広島の勝利でしたが、仮にスコアが逆だったとしたらDeNAの勝利で試合が成立していました。
また、(2)のルールがあるので、5回裏攻撃途中であっても田中 広輔の先制タイムリーが出て以降に降雨コールドが宣言されていたら、広島のコールド勝ちが成立していたことになります。
6回以降(正式試合が成立して以降)の降雨コールドのルールは、次のようになります。
- 裏の(ホームチームの)攻撃が終了した時点であれば、その時のスコアで試合終了。
表 000 001|1
裏 000 000|0
(1-0でビジターチームの勝利) - 裏の(ホームチームの)攻撃中に終わって、その回にホームチームが勝ち越し点をあげていれば、その時のスコアで試合終了。
表 000 001|1
裏 000 011X|2
(2-1でホームチームの勝利) - 回の途中で終わったとして、その回の表裏の得点がその前の回までの勝敗に影響しない場合は、途中時点のスコアで試合終了。
表 000 002X|2
裏 000 03|3
(3-2でホームチームの勝利)表 000 031|4
裏 000 003X|3
(4-3でビジターチームの勝利) - ホームチームがリードしていた回の、次の回の表の攻撃でビジターチームが同点に追いつき、表の攻撃中にそのまま終わった場合(または裏の攻撃中、点が入らないうちに終わった場合)、前の回にさかのぼって勝敗が決定(最終回の成績は無効)。
表 000 001X|1
裏 100 00|1
(1-0でホームチームの勝利)表 000 001|1
裏 100 000X|1
(1-0でホームチームの勝利) - ホームチームが同点またはリードしていた回の、次の回の表の攻撃でビジターチームがリードを奪い、その裏の攻撃中、同点に追いつかないうちに終わった場合、前の回にさかのぼって勝敗が決定(最終回の成績は無効)。
表 000 012|3
裏 100 001X|2
(1-1で引き分け)表 000 003|3
裏 100 001X|2
(1-0でホームチームの勝利)
これらのルールから、ホームチーム(裏に攻撃のチーム)が有利になるように設定されているのが分かります。
2024年4月21日にも、巨人が6回表に勝ち越したものの、降雨コールドにより引き分けになった試合がありました(犠牲フライの得点は認められず5回裏時点のスコアで試合終了)。
メジャーリーグ(MLB)のルールも原則同じ
メジャーリーグ(MLB)も、試合成立の判断は5回が基準になるためプロ野球のルールと同じです。
ただし見出しで「原則」と書いたのは、日本に比べてメジャーの方が辛抱強く雨上がりを待つ中断を行うこと(すぐにコールドゲームを宣告しない)。
2時間近く雨が降り続く予報であっても、約2時間後に試合再開ができる目処が立っていれば、待ち時間を伝えてコールドゲームにしない風潮があります。
雨上がりを待つ要因としては、球場に訪れる観客の交通手段が電車ではなく殆ど全員が車であること(終電を気にしなくていい)、30球団で構成されるメジャーでは国土の広さ・過密日程の事情もあって中止を極力避けなければならないこと(ダブルヘッダーなどの対処すら難しい場合も)などが挙げられます。
高校野球は7回が基準(+決勝戦は特別ルール)
次に高校野球の降雨コールドについて。
勝敗決定の方法は(原則として)プロ野球も高校野球も同じですが、高校野球の正式試合が成立するのは7回が基準になります。
高校野球特別規則によると、
審判員が試合の途中で打ち切りを命じたときに正式試合となる回数の規則7.01(c)については、高校野球では5回とあるのを7回と読み替えて適用する。
とあります。
つまり、高校野球では次のようになります。
7回の表裏を完了した後に打ち切りを命じられた試合。(両チームの得点の数には関係がない)
7回表を終わった際または7回裏の途中で打ち切りを命じられた試合で、ホームチームの得点がビジティングチームの得点より多いとき。
7回裏の攻撃中にホームチームが得点して、ビジティングチームの得点と等しくなっているときに打ち切りを命じられた試合。
また、先ほど「(原則として)」と書いたのにはワケがあります。
実は、甲子園の全国大会と各都道府県の地方予選大会の決勝戦では、9回を終了しなければノーゲーム扱いで、再試合となってしまうからです(延長戦突入後の降雨コールドゲームは認められています)。
高校野球で起きた無情な雨天コールド&降雨ノーゲーム
雨によって試合の行方が変わってしまうのはルール上仕方がない面もありますが、高校球児の身に降りかかると複雑な気分になります。
2016年の第98回全国高校野球選手権大会 沖縄大会3回戦で、問題は起きました。
小禄 vs 浦添商の試合は、7-8と1点ビハインドで迎えた8回表の攻撃で浦添商が2点を取って逆転に成功。
しかし、続く8回裏の小禄の攻撃中に雨が強まって試合中断、その15分後に続行不可能と判断され、降雨コールドとなりました。
先に解説した通りですが、裏の攻撃が完了しなければ前の回にさかのぼって判断されるため、浦添商は逆転に成功したものの認められず、7-8で敗戦となってしまいました。
雨による無念の敗戦という悲劇に見舞われたものの、次の試合では小禄を応援する浦添商の選手の姿がスタンドにあったとのことで、高校球児の清々しい姿に胸を打たれます。
地方大会決勝戦で「あと2人抑えれば甲子園出場」というところで、降雨によりノーゲームになったのが1989年の大分大会。
大分雄城台 vs 鶴崎工の決勝戦は、大分雄城台が4-1とリードして迎えた9回裏に、鶴崎工に1点差まで迫られなおも1アウト1塁3塁のピンチを迎えます。
大分雄城台はあと2人抑えれば甲子園出場、鶴崎工は一打サヨナラで甲子園出場という緊迫した場面でしたが、雨足が強まったため続行不可能の判断が下されました。
先述の通り、決勝戦は9回を終了しないとノーゲーム扱いとなるため、再試合に...。
再試合では鶴崎工が6-2で大分雄城台に勝利し、甲子園出場権を獲得。
大分雄城台は残り2アウトが取れず、甲子園出場が叶わなかった形となりました。
野球の試合は、ドーム球場でない限り雨に水を差されてしまいます。
雨で試合の行方が決まってしまうのは残念な幕切れですが、降雨コールドのルールを知っていると、雨を味方につけた(?)采配に着目できて少しは観戦が楽しめるのかもしれません。
(書いていて「どんなケースで楽しめるんだ」と自問自答)
以上、野球の降雨コールドのルールと、プロ野球・高校野球で違っている点についてでした!