2016年のウィンブルドンは1回戦がほぼ終了し、アンディ・マレーは同胞のリアム・ブローディを6-2 6-3 6-4のストレートで退け好スタートを切りました。(全仏と同様、雨による順延があり、3日目にズレ込んでいる試合もあります。)
相手に一度もブレイクを許さない、危なげない試合運びでした。(ブレイクポイントは2回与えていましたが)
【マレー VS ブローディのハイライト】
錦織 圭は世界最速サーブ記録保持者のサム・グロス相手に苦戦するかと思いきや、あっさり6-4 6-3 7-5のストレートでの勝利でした。
錦織の試合内容に関しては、錦織圭「チケットの元はとれたかな」ウィンブルドン初戦を面白くした創意。(NumberWeb)で詳しく解説されているのでそちらをご覧ください。
【錦織 VS グロスのハイライト】
ところで、今大会で初日から話題持ち切りといえば、無名のイギリス人テニスプレーヤー、マーカス・ウィリス(25歳)です。
ランキング772位の「テニスコーチ」の快進撃
1回戦のカードを事前に一通りチェックしていましたが、ウィリスの試合は失礼ながら全く注目していませんでした。
そもそも、ウィリスという名を聞いたこともありませんでした。
どんな選手なのかも当然知りません。
the TENNISDAILYの選手名鑑でも、プロフィール写真もランキングも記載されていないくらいです。
それもそのはず、ウィリスは今年のテニスの試合での報酬がたったの356ドル(約3万7000円)で、主に地元の子供やお年寄りにテニスを教えるテニスコーチとして活動しているからです。(コーチ業が本業です)
新しくできた現在のガールフレンドの説得で、プロテニスプレーヤーとしての活動も続けていましたが、勝利よりも観客を魅了することに重きを置いていたと、旧友であるブローディが明かしています。
当然、ランキング772位ではウィンブルドン本戦の主催者推薦枠にも入れません。
彼は、ブリティッシュ・ローン協会という団体が開催していた特別イベントで、3試合に勝利したことで、ウィンブルドン予選の主催者推薦枠を獲得したのでした。その後、見事に3試合に勝利し、本戦への切符を手中におさめました。
ウィリスのポイントが一気に3倍以上に
グランドスラムの予選を勝ち抜いて本戦出場を決めると、ポイントとして+25ポイントです。おまけに1回戦に見事勝利したので、+45ポイントです。
調べてみたら現在26ポイントを保持していたので、一気に96ポイントとなり約3.7倍増です。
現在のランキングに照らし合わせると、772位→425位と約350位ジャンプアップです。(追記:7月10日付のランキングで418位まで一気に上がりました!)
獲得賞金も1回戦の勝利で約680万円。生涯獲得賞金がダブルスも含め約970万円だというので、こちらもすごいことになっています。
次がロジャー・フェデラーでなければまだまだ躍進が続いたかもしれないと思うと少し残念ですが、自分のテニスコーチがあのフェデラーとウィンブルドンの芝コートで(しかもセンターコートで)戦うということに教え子たちは大興奮のようです。
フェデラーも、ウィリスのニュースに大きな関心を寄せ、「彼のような話題がテニス界には必要だ」と話していました。
確かにツアー参加選手の八百長疑惑や、マリア・シャラポワのドーピング違反など、暗いニュースが多かった2016年だけに、嬉しいニュースです。
(追記)
ウィリスはフェデラーに0-6 3-6 4-6で敗れましたが、完全ホームの中試合が進むにつれ堂々と戦っていました。
サーブ&ボレーやスライス多用で果敢にチャレンジするウィリスの姿勢に、勇気をもらえた人も多いのではないでしょうか。
【フェデラー VS ウィリスのハイライト】
ウィリスはウィンブルドンが終了してからも、コーチ業とテニスのトレーニング・ツアー参加を継続しています。
本人曰く向こう4年以内に世界トップ100入りを目指して頑張っているとのこと。
ウィリスのその後の多方面での活躍にも期待です。
2016年のウィンブルドンは波乱の幕開け
ウィリスの衝撃にどうしても意識が向きますが、今大会は1回戦からフルセットの試合が相次いでいます。
実に16試合がフルセットでの決着でした。割合としては初戦の4試合に1試合がフルセットです。
統計データがないので所感でしかありませんが、多いような気がします。
勝者の最終セットスコアが10ゲーム以上での決着も4試合ありました。
いわゆる泥試合ってやつです(笑)
<サム・クエリー VS ルーカス・ロソル>
6-7(6-8) 6-7(6-7) 6-4 6-2 12-10
<ブノワ・ペール VS フランコ・スクゴール>
3-6 7-6(7-2) 6-2 6-3 10-8
<サンティアゴ・ヒラルド VS ジル・ミュラー>
6-4 7-6(7-3) 6-7(5-7) 3-6 13-15
<アルバノ・オリベッティ VS マシュー・バートン>
7-6(9-7) 6-7(5-7) 6-7(5-7) 3-6 13-15
また、初戦シードダウンの顔ぶれは以下の通りです。
<シードダウン選手>
17シード:ガエル・モンフィス
20シード:ケビン・アンダーソン
21シード:フィリップ・コールシュライバー
29シード:パブロ・クエバス
2回戦の注目カードはバブリンカ VS デルポトロ
ファン・マルティン・デルポトロがグランドスラムに復帰しています。
かつての本当の4強時代に、唯一グランドスラムタイトルを持っていた「錦織がどうやっても勝てそうになかった相手」デルポトロです。
1回戦でベテランのステファン・ロベールを6-1 7-5 6-0のストレートで下しました。
そして何と2回戦で当たるのは、第4シードのスタニスラス・バブリンカです!(もったいない!)
2回戦とは思えない、グランドスラムを制した者同士の熱戦に注目です。
錦織は脇腹の怪我が少し心配ですが、いけるところまで勝ち上がって欲しいですね!(このまま悪天候だと、コーチが期待していたように恵みの雨となるかもしれません)
今年こそ松岡修造の記録であるベスト8進出には並んで欲しいものです。