全米オープンテニスは、大会8日目にボトムハーフの4回戦4試合が行われ、以下のように準々決勝へ太字の4名が進出しました。
ファン・マルティン・デルポトロ 6-3 3-2(ret) ドミニク・ティーム
スタニスラス・バブリンカ 6-4 6-1 6-7(5-7) 6-3 イリヤ・マルチェンコ
錦織 圭 6-3 6-4 7-6(7-4) イボ・カルロビッチ
アンディ・マレー 6-1 6-2 6-2 グリゴール・ディミトロフ
大会10日目に「デルポトロ VS バブリンカ」、「錦織 VS マレー」が行われ、ベスト4入りをかけて対戦します。
まずは、マレーの4回戦ディミトロフ戦について触れます。(トップ画像はマイアミで対戦時の写真です)
ディミトロフ戦から分かる、マレーの変化
4回戦になっても、マレーの試合トータルでの1stサーブ%は53%と低調でした。
これで、全米オープンのサーブの確率は初戦から59%→43%→53%→53%となっています。(マレーのキャリア平均は60%程度です)
しかし、同じ53%でも3回戦のパオロ・ロレンツィ戦とは内容が違いました。
もう少し詳しく掘り下げていきます。
自己最速のファーストサーブを記録(マレーの自己申告)
この試合、マレーのファーストサーブで141マイルを計測。(約227km/h)
以前、145マイルを記録した事がありましたが、本人曰く「スピードガンの誤作動」とのことなので、今回のが本人の中では最速です。
サーブのスピードが速いというだけで、単純にポイント獲得率が上がるという事はありません。
プレイスメントや球種、相手選手との駆け引きやどんな場面か等、サーブに関しては多岐にわたる項目があります。
ただ、141マイルはそうそう出るスピードではありませんし、マレーにとっては明るい材料だと言えます。
大事なポイントをサービスで簡単に奪えた
1stサーブ%と関係のある話ですが、「いつファーストサーブが入るのか」が非常に重要です。
ゲームカウント5-1・40-0で入るファーストサーブよりも、5-6・30-40で入るファーストサーブの方が、はるかに価値があります。
つまり同じ53%でも3回戦と4回戦とでは全く内容が異なりました。
ディミトロフ戦では、先述のような極端な場面は訪れませんでしたが、流れが傾きそうなタイミングで見事なファーストサーブ(エース、または相手を崩しウィナーにつながるサーブ)が入りました。
ディミトロフは、攻略の糸口を見つけ出すのが困難になり、先にブレイクされた焦りからメンタルが追い込まれ、各セットとも一方的なスコアとなってしまいました。
「大事な場面でのファーストサーブの重要性」、これはフェデラーの全盛期をご存知の方なら納得でしょう。
ただ「完成度が高い」「オールラウンダー」「スゴいフォアハンド」等だけでは、フェデラーのあれほどの強さはなかったはずです。
まるでプレッシャーなど微塵も感じていないかのように、涼しい顔で厳しい場面をサーブで切り抜けられたからこそ、フェデラーがトップに君臨していたのだと思います。
マレーがそのレベルに達したかは分かりませんが、今後も同様にサーブで打開できるなら、ランキング1位の座も夢ではありません。
最近好調のディミトロフを一蹴
マレーは試合前、ディミトロフを警戒していました。
テニス選手は多少のリップサービスも含めて、「タフな試合になる」「簡単には勝てない」と警戒の意を表しますが、今回は本音だったでしょう。
というのも、ディミトロフは今大会だけでなく、北米ハードシーズンでずっと好調を維持していたからです。
ロジャーズ・カップでは準々決勝で錦織に破れるも8強入り、シンシナティ・マスターズでは準決勝まで勝ち進みました。(優勝したマリン・チリッチに敗退)
ともにマスターズ1000の大会で、ディミトロフ復活を予感させるには十分でした。
そして今大会でも順当に16強入り。(2回戦でジェレミー・シャルディにフルセットの辛勝でしたが、彼は前回大会でもダビド・フェレールを3回戦で破った難敵です。)
それだけに、合計5ゲームしか落とさない圧倒的なスコアでの勝利は、圧巻の一言です。
錦織戦に向けて気になるポイント
素晴らしい勝利での準々決勝進出とはいえ、順風満帆とは言えません。
まず、効果的なサーブが多くあったものの、やはり試合トータルでの1stサーブ%INの低さは気になります。
優勝までの残り3試合の対戦相手を考えると、せめて60%以上はないと自身のサービスゲームで苦しむことになるでしょう。
まして、錦織やジョコビッチのようなリターン力に定評のある相手だとなおさらです。
また、錦織のロブが相当鋭くて嫌らしい点も気になります。
カルロビッチ戦では印象的な3本のロブウィナーを決めていました。
そして実は、リオ五輪でもラリーの中で綺麗にロブを決められたポイントがありました。
あの試合では錦織の調子もイマイチだったので、ラリー戦でマレーが圧倒していましたが、今大会の錦織の状態を見ているとあそこまで一方的にはならないはずです。(特別マレーに苦手意識があって、対面したらダメになるなら話は別ですが)
錦織としては、いかにマレーを前後左右に揺さぶって、かつどれだけ拾われても焦らずに自分の形でポイントを奪えるかがカギになります。
そのためにも、錦織はファーストサーブの確率で70%近い数値を求められるでしょう。でなければ、セカンドサーブはマレーのブロックリターンの格好の餌食となってしまいます。
マレーのフォアの逆クロスも依然として切れ味鋭く、一本で相手を崩せる破壊力があるので要警戒と言えます。
逆に言えば、マレーは錦織サーブの調子が悪ければリオ五輪のようにラクに試合を進められるかもしれません。自身のサーブが良ければなおよしです。
どちらが先に仕掛けるのか、どのタイミングで攻守が逆転するのか、ラリーの駆け引きにも注目です。
モンフィスとジョコビッチが4強入り(大会9日目速報)
準々決勝の2試合が先ほど終わりました。
ガエル・モンフィスが好調を維持しており、ラファエル・ナダルを破ったルカ・プイユを6-4 6-3 6-3のストレートで撃破。
相変わらず集中した時のパフォーマンスは目を見張るものがあります。
メンタルも安定しているので、次戦でも引き続き良いプレーを期待したいです。
もう1試合はノバク・ジョコビッチ VS ジョー・ウィルフリード・ツォンガ。
こちらは非常に残念な結果となってしまいました...。
結果はジョコビッチから見て6-3 6-2となった時点でツォンガが棄権を申し入れて試合終了です。
これでジョコビッチは今大会3度目の相手が棄権(試合前含む)での勝ち上がりです...。
トップハーフはモンフィス VS ジョコビッチとなりました。熱戦を期待します。
さて、注目のマレー VS 錦織は、大会10日目の第2試合に行われます。
現地時間9/7の午後1時以降、日本時間9/8の午前2時以降のセンターコート(アーサー・アッシュ・スタジアム)です。
リオ五輪よりももっと盛り上がる、手に汗握る一戦となるはずです。
それぞれの贔屓の選手を応援しつつ、試合を見守りましょう。
Let's Go Andy!!