テニス初心者には分かりづらいテニス用語について、細かい所までじっくり解説しています。今回はサーブ(サービス)編です。
テニス観戦のおともに、お役立て頂けましたら喜びます(ちなみに、「喜びます」は錦織圭の出身地、島根県の方言らしいです)。
サーブ(サービス)の種類について
1stサーブ(ファーストサーブ)
サーバー側の選手がはじめに打つサーブのことで、失敗すると次は2ndサーブを打つことになります。次にまだ打てるということで、特にシングルスでは力一杯全力で速いサーブを打つ選手が大半です。
錦織圭が200km/hを超えるようになったのもファーストサーブの球速です。
2ndサーブ(セカンドサーブ)
ファーストサーブが失敗した後に打つ2本目のサーブです。セカンドサーブも失敗してしまうと、自動的に相手のポイントになってしまうので、慎重に失敗しないように打つサーブです。
テニス初心者はそーろっとゆっくり打つ人が多い印象ですが、中級者以上やプロはしっかりとラケットを振り切って、回転量を増やすことで確率の高いサーブを打ちます。
男子テニスでは特に縦回転の多いスピンサーブを打つ選手が多かった印象ですが、近頃は女子テニスでも頻繁に目にします。
フラットサーブ
ラケット面をボールに対してまっすぐに当てて打つサーブ。ほとんど回転がかからないのでボールスピードが最も速いサーブで、1stサーブに多く使われます。
コースが若干甘くても速くて威力十分なのでポイントを取れる確率は高くなりますが、入る確率が最も低いサーブです。
スライスサーブ
横回転のかかったサーブで、フラットサーブよりも山なりの軌道になるので入る確率が高いサーブです。
右利きのプレーヤーがスライスサーブを打つと、バウンド後左奥方向へ滑るように変化していきます。
フラットサーブ・スピンサーブと比較するとバウンドが低いのが特徴で、相手のリターンの攻撃力を下げる目的でセカンドサーブに採用する選手も多いです。
外へ滑るようにキレていく(逃げていく)性質を利用して、ファーストサーブでコースを狙って相手の体勢を崩す使い方をすることもあります。
スピンサーブ
ボールに縦回転をかけるサーブで、個人的見解では中級者以上のプレーヤーはマスターしている事が多い印象です。
スライスサーブ以上に山なりで失敗しにくいので、男子テニスで現在最もセカンドサーブに使われているサーブで、バウンド後に高く弾むのが特徴です。
女子テニスでも打てる選手が増えてきていますが、通常スピンサーブを打つには体幹と背筋の強さが求められます。
入る確率が高い反面、浅く入ってしまうと相手にとってチャンスボールの高さに弾む恐れがあり、特にプロではコースもシビアに求められるサーブです。
キックサーブ(ツイストサーブ)
スピンサーブの一種で、「時計で言うと8時から2時の方向に向かって打つ」と表現されるサーブです。斜め回転がかかるので、右利きのプレーヤーの場合バウンド後に右上に弾みます。男子プロのスピンサーブはほとんどがキックサーブ(気味)です。
最近だとミロシュ・ラオニッチのキックサーブの威力が凄まじく、錦織圭が自分の身長よりも上で打っている光景を目にしたことのある方も多いのではないでしょうか(それでもリターンエースを取ったりできるのが錦織のスゴイところ)
漫画・テニスの王子様で、主人公の越前リョーマが打つ「ツイストサーブ」もキックサーブと同じものを指すはずです(作中ではデータ野郎・乾がツイストサーブとキックサーブでは微妙に回転や何やらが...と解説してましたが、途中で省略されていて分かりません)。
クイックサーブ
速度の速いサーブという意味ではなく、トスを上げてから打つまでの時間がはやいサーブのことです。
男子プロでは、ニコラス・アルマグロやアレキサンドル・ドルゴポロフなどがクイックサーブに当てはまります。試合中に意図的にクイックサーブを使ってリズムを変える選手もいて、戦術の一つでもあります。
アンダーサーブ
テニス初心者にはおなじみの、下から打つサーブです。
テニスのサーブは絶対に上からスマッシュのように打たなくてはならないものではありません。打つまでに地面にバウンドさせるのはダメですが、ノーバンで下から打つのはOKです。
プロではエキシビションでたまにトップ選手が打っていたりしていましたが、2019年頃からキリオスやブブリクなどトリッキーなプレーが特徴の選手によって多用され、物議を醸しています。
ちなみに、軟式テニスのセカンドサーブでは、ネットギリギリに落ちる横回転のかかったアンダーサーブを打つ人もいます(軟式はあまり詳しくありませんが、アンダーカットという名前のようです)。
サーブ(サービス)の作戦・戦術について
ダブルファースト
セカンドサーブに、ファーストサーブで打つようなサーブを選択する事を指します。勢いに乗りたい時、スコアに余裕があって強気に攻めても大丈夫な時などによく使われます。
セカンドサーブの最速記録はイボ・カルロビッチの232km/hで、ダブルファーストでなければ絶対に記録できないスピードです。
サービスダッシュ
サーブを打った後、一気にネットへとポジションを前に移す戦術です(ちなみに、テニスでポジションを前に進める事をネットダッシュと言います)。
サーブダッシュとは言いません。
サーブ&ボレー
サービスダッシュの目的とも言える形で、相手のリターンをそのままボレーする戦術です。サーブが良い所に入ると、相手は返球するのがやっとなので、ネットに詰めておくと決まりやすいので、サーブが武器の選手がよく使います。
90年代後半くらいまではどのプレーヤーもサーブ&ボレーが主体で、近年はあまりする選手はいませんが、ロジャー・フェデラーが2014年あたりから採用してランキング上位を維持しているように、決して効果がなくて廃れている訳ではありません。
試合中のここぞの場面で、意表をつく目的や劣勢を切り抜けるために戦術的にサーブ&ボレーを行う選手は多くいます。
ワイドスライス
スライスサーブの特性を生かして、右利きだとデュースサイドから左側(ワイド)を狙って打つスライスサーブの事です。
左利きだと、大事なポイントが多く訪れるアドサイドで使える戦法なので、「テニスは左利きの方が有利」という議論がたまに沸き起こります(特にラファエル・ナダルが1位に君臨していた時によく聞かれました)。
サーブのバリエーションの一つとして有効に使う選手が多く、相手の読みを外せればファーストサーブでエースも取れる強力なサーブです。
プレースメント重視(プレイスメント重視)
野球で言うところの「コントロール重視」「コース重視」のことです。
どれだけ速いサーブを打っても、相手の得意なコースに打つと簡単に返球されてしまいます。逆に、若干スピードや回転が劣ったとしても、苦手なコースや絶妙なコースに配球すると強力なサーブとなります
ロジャー・フェデラーのサーブは200km/h以下でもエースを量産します。プレイスメントもさることながら、球種も使い分けるので非常に返しづらいサーブを打つのが特徴です。
サーブ(サービス)のルール・決まりについて
キープ・ブレイク
テニスはどちらかがサーブを打つところから試合が始まります。
サーブを打つ側のプレーヤーを「サーバー」、リターンする側のプレーヤーを「レシーバー」と言います。
サーバーが、自分のサービスゲームを取ることをキープと言い、反対に自分のサービスゲームを相手に取られることをブレイクされると言います。
レシーバーから見たら、キープはされるもの、ブレイクはするものです。
ブレイクポイント(ダブルブレイクポイント)(トリプルブレイクポイント)
相手のサービスゲームで、サーバーから見て30-40やデュースでアドバンテージレシーバーになった際に、「ブレイクポイントが訪れる」と表現します。
頭にダブルが付くダブルブレイクポイントは、ブレイクチャンスが2回あることを指し、スコアはサーバーから見て15-40です。
トリプルブレイクポイントはブレイクチャンスが3回あることを指すので、スコアは0-40です。
テニスのスコアは原則その時のサーバー側から見た基準で考えるので、ブレイクポイントが相手に訪れている時のスコアは、0-40、15-40、30-40、アドバンテージレシーバーのいずれかです。
ブレイクバック
同じセット内で、先に自分のサービスゲームがブレイクされたものの、相手サービスゲームをブレイクし返す事を指します。
クレーコートでの試合や、サービスよりもストロークに自信のあるプレーヤー同士の試合だと、お互いにブレイク・ブレイクバックを繰り返すブレイク合戦になることも珍しくありません。
エース(サービスエース)(ノータッチエース)
エースとは、相手に触れられないまま決まるサービスの事を指します。サービスエースとも言います。
ノータッチエースという言葉もありますが、プロの試合では基本的にエース=ノータッチエースのことです。
フォルト(フォールト)(サービスフォールト)
サービスエリア内で自分のサーブがバウンドしない状態を指し、サービス失敗を意味します。
少しでもライン(白線)にかかっていればサービスはインと判定されるので、微妙な時にはコートにホークアイがあれば選手はチャレンジすることができます。
ダブルフォルト(ダブルフォールト)
ファーストサーブもセカンドサーブもフォルトになってしまった状態で、相手に自動的にポイントが与えられます。
ダブルフォルトは、プロでも結構見られます。
セカンドサーブに対してリターンでプレッシャーをかける選手も多く、甘くならないように打ってフォルトになるケースが多いです。
中にはキャリア後半のマリア・シャラポワのように、シーズンを通してダブルフォルトの多い選手もいます。
フットフォルト(フットフォールト)
サービスの時に、インパクト(ラケットがボールに当たる瞬間)までに足がサービスラインよりも内側の地面に触れてしまうと、フォルトと判定されます。これがフットフォルトです。
プロテニスの試合中は、常に線審やラインジャッジシステムがサーバーの足元をチェックしています。
レット
打ったサーブがネットの白帯に当たって、そのままサービスエリアにバウンドした時に発声され、「レット、ファーストサービス」「レット、セカンドサービス」のどちらかです。
ネットに当たって入った場合は、そのサービスの打ち直しになります。
ネットに当たって、サービスエリアの外にバウンドした場合はフォルトです。
レットは何回続いてもその都度サービスのやり直しになります。
デュースサイド・アドサイド
デュースサイドは、デュースが始まる時のサイド(側)で、自軍コートの右側を指します。
一方アドサイドは、デュース中にどちらかにアドバンテージがある状態の時のサイド(側)で、自軍コートの左側を指します。
プロの試合では無いのですが、草トーナメントだと「ノンアド(ノンアドバンテージ)制」が採用されることがあります。
ノンアドとはデュースがないルールなので、試合中カウントが40-40になると、レシーバーがデュースサイドかアドサイドかどちらでリターンを受けるか決定できます。
サービスエリア(サービスコート)(サービスゾーン)
高速道路のSAではありません。
サービスがインと判定される範囲のことで、前後はネットからセンターラインまで、左右はシングルスコートの範囲を指します。
サービングフォーザマッチ(セット)(チャンピオンシップ)
「自分のこのサービスゲームをキープすれば、試合に勝てる」という状態を、サービングフォーザマッチと言います。
ゲームカウント4-4から相手サービスをブレイクできたから、自分のサービングフォーザセットだ、という具合です。
- キープでセットを取れるならサービングフォーザセット
- キープで試合に勝てるならサービングフォーザマッチ
- キープで優勝できるならサービングフォーザチャンピオンシップ
その他、サーブ(サービス)関係の用語などについて
ビッグサーバー
サービスがその選手の一番の武器であるような選手の事を指して言う言葉です。近年ではイボ・カルロビッチ、ジョン・イズナー、ケビン・アンダーソン、引退しましたがアンディ・ロディックなどが当てはまります。
強力なフラットサーブを武器にしている選手が多く、ほぼ全員が長身です。
錦織圭が「長身+ビッグサーバー=つまらない」と表現していたのが有名ですが、ストローク戦に持ち込めないほどの威力のサーブを持っているので実力者揃いです。特に球足の速い(バウンド後にボールの速度が落ちない・落ちにくい)サーフェス(コート面の種類・質)で猛威を振るうので、番狂わせがよく起きます。
ディフェンディングチャンピオンだったレイトン・ヒューイットが2003年のウィンブルドンで初戦敗退した際の対戦相手は、当時ランキング203位で無名だったカルロビッチでした(その後の活躍は言うまでもありません)。
トス
サービスを打つ時に、ラケットを持っていない方の手でボールを上に投げる行為を指します。
トス次第でサービスの出来は大きく変わります。
風が強い日などはトスが安定しにくく、サーバーにとってはやりづらい状況になります(お互い様ですが)。太陽が目に入って眩しくて打てないことも多々有ります(これもお互い様)。
右利きのプレーヤーの場合、スライスサーブは体の右側に、スピンサーブやキックサーブは体の左側(後ろ側)にトスを上げると打ちやすくなります。
トスを上げる位置でサービスの種類を相手に読まれると不利なので、殆どトスの位置を変えなくても球種を打ち分けられるトッププロもいます。
プロネーション(回内)
サービスで速度や回転を生み出すための腕の動きのことで、正しく行うとラケットの動きが加速されます。よく「うちわを仰ぐ時の手首の動き」と表現されますが、テニスのプロネーションは奥が深いようで...。
1分キープ
これは管理人に勝手に言ってる言葉なのですが(すみません)、特にロジャー・フェデラーがあっさりとサービスキープをした時を指します。
フェデラーはポイント間にかける時間が非常に短く、サービスが入ると高い確率でポイントを取るので、結果的に1分以内でキープをしてしまう事があります。すぐにまた自分のサービス順がまわってくるので、相手は焦ります。
ルーティーン(ルーチン)
サービスを打つ前に行う一連の動作は、選手によって非常に個性が出ます。
ノバク・ジョコビッチは劣勢になると玉突きの回数が異常に多くなりますし、ラファエル・ナダルは常に髪の毛を耳にかける動作を繰り返します。
アンディ・ロディックは敏感肌な人がよくやるように肩の部分の服をチョンと触りますし、マリア・シャラポワもナダル同様髪の毛をいじります。
サービスのルーティーンには個性が表れます。サーブのインパクト前の動作に注目して観戦してみるのも楽しいですよ。
1st Serve Points Won(2nd Serve Points Won)
ファーストサービス(セカンドサービス)が入った時にどれだけポイントを取ったかの確率です。
ファーストサービスは威力があるので、80%を超えることが多々ありますが、セカンドサービスは威力が弱まるので、50%を越えれば高い方です。
1st Serves IN
ファーストサーブが入る確率です。
70%を超えると高確率と見るのが一般的で、稀にプレーヤーによっては90%近く入る試合もあります。
逆にアンディ・マレーやスタン・バブリンカのように通算でも50%足らずな選手もいます。
ファーストサーブの出来が、試合の出来を左右すると言っても過言ではないので、1st Serves INはその日の調子を見る大きな指標になります。
サーブ(サービス)に関するテニス用語について長々と失礼しました
別のテニス用語についてもテニス用語の記事一覧ページで随時まとめていますので、よろしければご覧ください。