2016年シーズン、フランスのガエル・モンフィスが好調をキープしています。
(2016年4月19日時点)直近のモンテカルロ・ロレックス・マスターズでは決勝まで駒を進め、ラファエル・ナダルにフルセットの末惜敗したものの準優勝を飾った他、ほとんどの大会で準々決勝まで勝ち上がっています。
今年だけのポイント順位が分かる「Emirates ATP Race To London」を見ても、錦織よりも上にモンフィスがいるのが分かります(2016年4月19日時点)。
今回は、日本にもファンの多いモンフィスについて少し詳しく見ていきます。
モンフィスはUnderachieverの代表格
「Underachiever」(アンダーアチーバー)とは、予想よりも実際の成績が思わしくない選手のことを指します。
過小成就者なんて日本語があてられたりしています。
モンフィスは、過去に13・14歳以下の100m競走のフランスチャンピオンになった事があるほどで、その走力は目を見張るものがあります。
プレー中の動きを見ていても、もはや陸上選手の走りです。
体のバネも凄まじく、垂直跳びで一体どれくらい飛ぶのか分からないくらい、ダンクスマッシュ等の滞空時間も長いです。
本人はバスケットが好きで「テニスをしていなかったらバスケットをしていたと思う」と語ったそうですが、おそらくバスケットでも次々にダンクシュートを決めて成功を収めていたのではないでしょうか。(身長も193cmあります)
つまりモンフィスは恵まれた(恵まれすぎた)身体能力の持ち主という訳です。
そのポテンシャルの高さからすると、これまでに残してきた成績はアンダーアチーバーと言わざるを得ません。
次に、これまでの成績について見てみましょう。
18歳11ヶ月でのツアー初優勝も
モンフィスは18歳の時の2005年8月にクレーの大会(ATP250)でツアー初優勝を飾りました。
地元・フランスで毎年開催されるグランドスラムである全仏オープンはサーフェスがクレーなので、モンフィスへの期待は一気に高まります。
それまでも、モンフィスはジュニア時代の2004年に全豪オープン・全仏オープン・ウィンブルドンの3冠を達成していたので、将来を嘱望されていたテニスプレーヤーでした。
ところが、残念ながらツアー2勝目を挙げたのは2009年の9月。
実に4年もの時間がかかってしまいました。
モンフィスは周囲からの期待とは裏腹に、明らかに伸び悩んでいました。
(とはいっても当時シングルス最高位は9位を記録していたので、決して悪い数字ではありませんが...)
2016年4月19日時点までで、シングルスで合計24回決勝進出したうち、優勝できたのはわずかに5回だけです。しかも500以上の大会では一度も優勝できていません。
シングルス最高位が7位とはいえ、あまりに物足りない内容です...。
(2016年7月25日追記)
アメリカ・ワシントンで開催のシティ・オープンで、ビッグサーバーのイボ・カルロビッチを5-7 7-6(8-6) 6-4の逆転で下し、初優勝を果たしました!
第2セットでカルロビッチのサービングフォーザマッチ、マッチポイントが訪れ、同セットタイブレークでも先にマッチポイントを握られる(モンフィスサーブ)苦しい展開でしたが、見事逆転勝利をあげました。
この優勝が、記念すべきATP500初制覇となります。
【モンフィス VS カルロビッチのハイライト動画】
https://youtu.be/bqwxnNOBb0s
モンフィスの身体能力とメンタル
前述の通り、モンフィスには明らかに恵まれた身体能力があります。
筋肉の質も良さそうで、しっかり鍛え上げられています。手足も長いです。
見た目だけでなくプレーにも生かされており、サーブもストロークも高い水準にあります。
では何故勝てないのか、惜しいところまで行くも勝ちきれないのか。
その答えは「弱すぎるメンタル」です。
最近はかなり改善され、試合を投げ出すようなプレーは少なくなっていますが、昔はヒドイものがありました。
劣勢になると一気にやる気をなくし、無気力テニスになることもしばしば。
試合中に関係ないところをキョロキョロ見ていたり、観客が気になって集中できなかったり、わざとかと思うくらいミスがはやくなったり...。
ノッている時は目を見張るプレーを見せる一方、ノッていない時はただの弱い人になります。
昔は試合中に眉間にシワを寄せて「どうしよう、マズイよ、ヤバイよ、勝てないよ」って顔になる事が多かったです(笑)
大事なポイントや、ロングラリーでもなかなかモノにできない印象です。
2016年のマイアミ・オープン、錦織相手に5度のマッチポイントを握りながらも逆転負けを喫したのも、いかにもモンフィスらしいなという感じです。
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勝利よりも観客の満足優先なモンフィス
モンフィスを見ていてたまに感じるのは、試合の目的が自身の勝利のためではなく観客の満足のためなのではないかということ。
必要以上にアクロバティックなプレーが多いのも、必要以上に打球速度のあるウィナーも、観る者を楽しませるためのサービス精神の賜物と言えます。
そういえば、リシャール・ガスケのエレガントなプレーも、ジョー・ウィルフリード・ツォンガの野性的なプレーも、どこか観客を楽しませ惹きつけさせる要素がありますし、フランス系のテニスプレーヤーの特徴なのかもしれません。
ここで、モンフィスの驚愕プレー動画を用意したので、ぜひご覧ください。
見ればすぐに、モンフィスがどんなプレーで観客を楽しませる傾向にあるか分かるはずです(笑)
これこそがモンフィスの魅力でもあり、ファンの心をガッチリ掴まえて離さない部分なので難しいのですが、もう少し勝利に執着して欲しい気がします...。
アクロバティックなテニスの代償
必要以上にアクロバティックなプレーは、直接ポイントに結びついていると言いづらく、続けているうちに体力を奪われます。
その結果、相手よりも先にバテてしまい、負けてしまうという残念なパターンがあります。
また、そのプレースタイル故に怪我が多く、体調万全なことが少ないです...。
才能を生かしきれず、もったいないテニスプレーヤー、ガエル・モンフィス。
2016年は調子が良さそうなので、500以上の大会での初優勝に期待です。
(※追記の通り、見事ATP500のシティ・オープンで初優勝を飾りました!)
この勢いでマスターズ1000の優勝、ランキング上昇、リオ五輪での活躍にも期待がかかります。
(2016年10月28日追記)
ガエル・モンフィスが自身初、ツアーファイナルの出場権を獲得しました!
最後まで好調を維持してきたモンフィスに、嬉しいご褒美です。
錦織に次いで6人目として確定しました。おめでとうございます!!