残念ながら錦織 圭はリシャール・ガスケに4-6 2-6 6-4 2-6で敗れ、ベスト8進出はなりませんでした。
雨による中断があり、再開後にボールが水を吸って重くなった事でストロークに狂いが出たと試合後に振り返っていました。
しかし、気候の条件は両者とも同じなので、戦術面でガスケの方が秀でていたという事でしょう。
一貫していたのは「錦織のバックの高めを狙って崩す」という戦術です。
「どちらのバックハンドが世界一か」と地元フランスメディアが煽っていた、自慢のバックハンドを狙ったわけです。
ベルダスコが手応えを感じていたバックハンド攻め
実は3回戦でも錦織は同様の戦術で苦戦を強いられていました。
フェルナンド・ベルダスコは2セットダウンで後がなくなってから、錦織のバックにスピンサーブと強烈なトップスピンを集めます。
いくらバックハンドが武器の錦織といっても、それは自分の打点で捉えた場合。
顔やそれ以上の高さで打たされるバックハンドは、力が伝わりづらくコントロールも難しくなります。
ベルダスコは、相手バックへのスピン系+ドロップショットによる前後の揺さぶりで、一気に錦織を崩しにかかりました。
そして、若干甘くなった返球を強力なフォアハンドで叩くスタイルで、勝利まであと一歩のところまで試合をコントロールしました。
相手が試合中に戦術を変えてきて、それが上手くいった場合、そのまま振り切られることも多いのですが、負けなかった錦織を見て一段と成長したと感じました。
ガスケ戦も、劣勢が訪れたとしても修正して試合をものにしてくれるだろうと予想していました。
ガスケはベルダスコよりも安全策を講じて勝利に徹した
しかし、ガスケ戦はベルダスコ戦とは違い、はじめのセットを落としてしまいます。
第1セットを取られた焦りからか錦織が攻め急ぐ場面が多くありました。
雨で中断するまでの攻撃的なラリーで相手を抑え込もうとするのですが、雨の影響でボールが重くなり、ウィナーを取れていたボールで取れなくなりました。
より早いテンポ、より攻撃的にとシフトすればするほど、当然ショットの難易度は上がりアンフォーストエラーは増えてしまいます。
焦る錦織に対してガスケはしつこくバックの高めを攻め、錦織の攻撃に対しては粘って返球するスタイルを貫きました。
粘るといってもガスケのストロークは強いトップスピンがかかっている(特にバックのクロス)ので、深めにいくと相手は差し込まれてしまいます。
自分からリスクを負って攻める必要が少なかった分、ベルダスコよりも安全策だったと言えます。
第2セットも結局2-6で落とし、後がなくなった第3セットでは意地を見せるものの、第4セットで試合が決着しました。
1stサーブが入ってもポイントが取れない=ラリーで勝てない
試合のサマリー(スタッツ)を確認すると、錦織は1stサーブ%が高い(70.6%)にもかかわらずポインツウォンが低い(62.3%)のが分かります。
逆にガスケは入りこそ悪い(60.8%)ものの、サーブが入れば錦織よりも10%以上高い確率(72.9%)でポイントを取っています。
セカンドサーブで65.8%もポイントを取られていることから、完全にラリーで勝てていなかったことが分かります。
ウィナーとアンフォーストエラーの数値で見ても一目瞭然ですね(錦織のウィナーとアンフォーストエラーの数は40-45、ガスケは36-19)。
コートが雨でハードコート寄りになってしまったから、ガスケに有利な状況になったのかもしれません。
とはいえ、両者の実力からするとここまで差が出るのは驚きです。
錦織ファンの皆様にとっては非常に残念な結果でしたが、2016年に充実したクレーコートシーズンを送っていたのは紛れもない事実です。
2017年のクレーコートシーズンは、悲願のマスターズ制覇もあるのではないでしょうか。
よりオールラウンダーへと進化を続ける錦織に、これからも注目です。
ちなみに、勝ち進んだガスケの対マレー戦は連日の雨による順延で現地6/1になりました。
残りの4回戦(ジョコビッチ戦など)もまだ順延になっているので、4回戦と準々決勝を同日に進行するという珍事になっています(笑)
地元全仏で初のベスト8入りを果たしたガスケがその勢いのままにマレーを破れるのか。
マレーがやはり立ちはだかるのか。
センターコートの「フィリップ・シャトリエ」で、ジョコビッチ対ロベルト・バウティスタ・アグーの一戦終了後に予定されています!
Let's Go Andy!!