ツアーファイナル2016のラウンドロビン第2試合で注目の一戦が行われ、アンディ・マレーが錦織 圭に6-7(9-11) 6-4 6-4で逆転勝利を収めました。
また、現地夜に行われたスタニスラス・バブリンカ VS マリン・チリッチは7-6(7-3) 7-6(7-3)でバブリンカが勝利。
この結果、ジョン・マッケンロー・グループの準決勝進出2名は、第3試合の結果次第となりました。
マレーは次戦で1セットを取れれば、たとえ負けたとしても準決勝進出が決定します。
ただ、ノバク・ジョコビッチが予選全勝で来るでしょうし、同じく全勝通過を果たしたいところです。
さて、今回はマレー VS 錦織の一戦から見えたマレーの「強さ」についてまとめています。
目次
ラリーの主導権は不要、粘り続けてミスを引き出す
マレーの武器は沢山ありますが、特に目を引くのが全盛期ナダルを彷彿とさせる「フットワーク」と「フィジカル(体力・故障の少なさ)」です。
190cmと長身でリーチが長い上コートを縦横無尽に走り回るので、マレー相手だとラリー戦でポイントを取るのに非常に苦労します。
ひたすら拾い続けられることで、より厳しい所・より厳しいタイミングとプレッシャーがかかり、アンフォーストエラーが増えやすくなります。
拾って拾って拾いまくる...全盛期のナダルやフェデラーは、いつの間にか攻守逆転がよくありましたが、マレーの場合はひたすら相手のアンフォーストエラーを誘発するスタンスが多いです。
もちろんただ拾っているだけではなく、相手コートの深めにしっかり返球するので、相手はなかなかマレーの牙城を崩せません。
錦織戦でも、スピンを多めにかけた山なりの返球で、少しでも攻撃を遅らせようと工夫していました。
自慢のフットワークと体力を生かし、相手に攻めさせて試合を組み立てる嫌らしさが、マレーの強さの一つです。
錦織ほどの攻撃力だと、本当に攻められっぱなしで振り切られる恐れもあるので、見ているこっちはヒヤヒヤですが...。
【マレー VS 錦織のハイライト動画】
ここぞという場面でサーブのフリーポイント
錦織とマレーとの大きな差は、サーブのフリーポイントの有無です。
マレーは1stサーブの確率が低い選手で有名ですが、入れば強力です。
プレイスメントも良いので、入った時はほぼフリーポイントとなります。
特にラリーが白熱しお互いに体力消耗が激しい試合では、エースやサーブのフリーポイントがどれだけ出るかが勝利へのキーとなります。
今回の試合ではマレーのエース8本に対して錦織は0本。
錦織のダブルフォルト6本は嫌な場面で出てしまっていました。
サーブ力の差が試合の勝敗に少なからず影響したと言えます。
ナダルと並んでツアーきってのリターン巧者
サーブは入れば強力と言いましたが、いつでも大事な場面で入るとは限りません。
2016年のサービスキープ率は85.1%で13位です。
(ちなみに錦織は83.1%で22位、サーブが弱点と言われて久しいものの大きくはマレーと差がありません。抜群のストローク力でカバーしていると思われます)
あっけなくブレイクされることもよくあるマレーですが、相手サーブをブレイクする回数が非常に多いのが特徴です。
2016年のリターンゲーム獲得率は36.7%で、ナダルの40.8%(!?)に次いで2位です。(錦織は30.2%で7位、十分に高い数値です)
マレーは2009年以来8年連続で30%超えを果たしている、ツアー屈指のリターン力を持った選手です。
相手1stサーブ時のポイント獲得率も33.8%(3位)と高く、リターンで相手にプレッシャーをかけているのがよく分かります。
(この項目の数値は11/24に2016年の最終成績を反映させました)
元々は変幻自在のセオリー無視テニスで球種が豊富
最近はだいぶ薄れてきていますが、若いころのマレー=セオリー無視のテニスというイメージでした。
唐突に繰り出されるドロップショットや、何故かダウンザラインにばかり配球するストローク。
今日は果敢に攻めてるなと思いきや、ゲーム途中で急にシコラーに転身したりと気まぐれなプレーがある意味持ち味でした。
全盛期フェデラーがマレーには一時負け越していたのも、その組み立ての読めなさに原因があったはずです。
今は自制心を保ってしっかりとゲームプランを立てて試合を進めていますが、ショットバリエーション(球種)の多さは変わらず健在です。
・軽く飛び跳ねるようにしてスピン量を増やして返球するフォアのショートアングル(パッシングショットで多く使われます)
・横回転を加えてコート外へ追い出すバックのスライスダウンザライン
・絶妙なロブウィナー(ただし試合序盤にはウォーミングアップ用かと思うくらいの甘すぎロブを打つこと多々あり)
・浅いボールを器用に拾ってコントロールできるランニングバックハンド
・ウィナー級のフォアの逆クロス(レンドルがコーチになってから増加傾向)
・バックのクロス強打(相手セカンドサーブに対するリターンでも発揮)
・つなぎのダウンザライン(攻めさせてカウンター待機)
などなど...
試合の中で調子の良いショット悪いショットを取捨選択できるので、今回のO2コートのようにあまりフィットしていない状況でもラリーを組み立てられます。
ショットバリエーションの豊富さを生かした順応性の高さも、マレーの長所です。
1ポイントへの執念が凄まじいマレー
またもダラダラと長くなってしまいました...。
まとめると、フェデラーやナダルのようにとんでもないショットはないものの、目の前のポイントを粘り強く手繰り寄せようとする執念がスゴいといったところでしょうか。
世界ランキング1位の選手が相手に攻められっぱなしでは格好が付かない感じですが、必死でボールを追いかけ続ける世界1位もアリですよね。
このプレースタイルで大きな怪我なく、ツアーを勝ち続けられているというのは本当に驚きです。
まずはツアーファイナルのラウンドロビン通過、そして優勝と1位での越年へ。
マレーの挑戦は最後まで続きます。
連勝記録継続のまま、全豪オープンを迎えられたら最高です。
ロンドンは時差がヒドいので、応援するこちらもフィジカルにダメージを負いますが...Let's Go Andy!!