確信犯という言葉、正しく使えていますか?
この言葉は、元々は違った意味で使われていたけれど、誤用の意味で定着して使用されている代表例としてよく取り上げられます。
『そんなことをするなんて確信犯だ。』
という文章は、文化庁が平成7年度から毎年行っている「国語に関する世論調査」内で平成14年度と平成27年度に出題された例文です。
「確信犯」の意味を答える問題ですが、次のうち正解の選択肢はどれでしょうか?
- 政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人
- 悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人
- ①と②の両方
- ①や②とは全く別の意味
- 分からない
確信犯の本来正しい意味は?
上の問題に対する国民の答えは次のようになりました。
確信犯(例文:そんなことをするなんて確信犯だ。) | 平成14年度 | 平成27年度 | 増減 |
①:政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | 16.4 | 17.0 | +0.6 |
②:悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 | 57.6 | 69.4 | +11.8 |
③:①と②の両方 | 3.9 | 5.1 | +1.2 |
④:①や②とは全く別の意味 | 3.3 | 2.7 | -0.6 |
⑤:分からない | 18.8 | 5.7 | -13.1 |
表内の数字は%(割合)
確信犯の「本来の」意味は、①政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人です。
ところが、調査によると2002年度・2015年度とも②の「誤用の」意味が多数派です。
誤用の割合が上昇しているのは、分からないの選択肢を選ぶ人が減った分が流れたためです。
確信犯という言葉の生い立ちは、次のように説明されています。
「確信犯」は,法律に関係する学術用語として,政治的・思想的・宗教的な信念に基づく犯罪行為やその行為者を指して使われ始めたものです。
元々は法律に関係する学術用語で、日常会話で使う言葉ではなかったようです。
確信犯の誤用ではない使い方
政治的・宗教的〜では分かりにくいので分かりやすく言い換えると、自らの行為は正しいと確信して行われる行為・犯行、またはそれをする人の事です。
2015年に三重県の中学二年生の女子が連れ去られて行方不明になった事件がありました。
行方が分からなくなってから約1ヶ月後に無事発見・保護されたのですが、容疑者の男が警察の調べに対して述べた言葉が、確信犯の模範的なセリフでした。
自らの行為は正しいと確信している言葉です。
犯罪者扱いするなという意志が伝わってくる、これぞ確信犯の誤用ではない正しい使い方です。
テロリストによる自爆テロなども確信犯の最たる例です。
彼らは「被害が大きくなるであろう、影響が大きくなるであろう事を確信して」テロをしているのではありません。
自身が信じている思想や宗教に則って、正義のためにテロ行為を行っているのです。
誤用の方が定着していて自然
本来の意味について説明してきましたが、実際に多く使われているのは誤用とされる意味の確信犯です。
全体で見ると約七割の人々が確信犯を誤用しています。
※内訳を見ると60代が65.4%、70歳以上が55.9%(平成27年度調査)と年配の方ほど誤用が少ないようです(データ引用元:平成27年度「国語に関する世論調査」の結果について )。
誤用であっても、これほどまで一般に使われているということは、確信犯は「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」という意味で市民権を得ていると考えて良いでしょう。
ふだんから気軽に使われるようになった言葉(誤用の意味の確信犯)を,本来の「政治的・思想的・宗教的な信念に基づく犯罪行為及びその行為者」という意味で用いると,かえって違和感を覚える人もいるでしょう。
新しい使い方が広がっていくことで,「確信犯」が本来の意味で用いられることは,更に減っていくように思われます。
言葉は時代とともに変わっていく生き物としての性質があります。
「やばい」が元々悪い意味でしか使わない言葉だったのの、良い意味でも使われるようになって久しいのと同様、確信犯の使い方も範囲が広がってきています。
本来の意味でも誤用の意味でも、問題なく通じていればどちらでも正解ですよね。
確信犯の意味は文脈で判断して「誤用だ」と使い方に目くじらを立てず穏やかにいたいものです。
以上、確信犯の(誤用も含めた)意味と使い方についてでした!